2000.11.27号 07:00配信


生物学

課題 バイオテクノロジー


 以下に幾つかの微生物の特徴的有機合成とそれの遺伝子工学的利用可能性について述べる。

酵母菌

 数千年の長きに渡って、人類は原理においては未知のままにこの菌の発酵作用を利用し、アルコールはじめ様々な食品を生産してきた。発酵とは酵母が嫌気的環境で行う、生命活動のエネルギー獲得のための呼吸作用のことである。糖などエネルギーを持っている分子を分解しそのエネルギーを獲得する。それをもってCO2を炭素源として有機合成をし自己の体を作り活動の動力源とする。
 酵母菌のこの特性を利用して様々な物質が作られるが、野生株や変異株での生産量は十分ではない。そこで遺伝子を様々な方法で操作し、生産性をあげる工夫がなされている。
 一例をあげる。アルコール発酵の酵母は澱粉の糖化力を持たない。清酒の場合麹菌のアミラーゼを利用して澱粉を糖化し、得られる糖を酵母がアルコールに転換するという図式であった。それを遺伝子操作で澱粉発酵性アルコール酵母の育種が行われ、この新しい酵母は生澱粉スラリーを直接基質として糖化しうると共にそれを発酵してアルコールを生成することが可能となっている。これにより効率的な生産が可能となったのである。
 また酵母は真核細胞なので、動、植物の遺伝子の発現が効率的に行われる可能性を持っている。さらに大腸菌ができない、糖蛋白の生産ができるという特徴を持っている。よって遺伝子組換えの宿主としても、今後一層の利用が見込まれている。

 根粒菌

 豆科植物は自ら根粒菌に感染し、根に根粒をなしそこにこの細菌が繁殖する。この菌は宿主と共生しながら常温常圧下で、気体窒素から有機窒素を固定する。
 細胞融合や遺伝子組み替えにより、窒素固定能力を高めた菌体を作りだし、窒素肥料の大量生産を計っている。もっと進めると、窒素固定遺伝子を豆科以外の植物に導入ができるかもしれない。
 また根粒菌は、バイオプラスチックを作る微生物の一つである。他の同様の作用をする細菌との融合などの遺伝子操作でその大量生産が研究されている。地中、海洋中の微生物により分解されるので、その製品は農業、医薬ほか様々な分野での利用が期待されている。

亜硝酸菌

 硝酸菌と併せて硝化細菌と呼ばれる。まず亜硝酸菌がアンモニュウム塩を酸化して亜硝酸とする。それを硝酸菌が酸化して硝酸にみちびく。この一連の働きを硝化作用という。硝化作用で化学エネルギーを獲得し、それを使ってCO2と水から有機合成を行う。
 この菌はアンモニアに反応するので遺伝子組み替えでその能力を強化し、微生物センサーとして利用可能である。亜硝酸菌を固定化主体触媒として担体結合法で固定化し、酸素電極を媒介して電気信号にかえる、という仕組みである。医療、環境、食品などの分野での使用が予想される。

 緑色硫黄菌

光合成細菌の一種であるが、酸素は発生しない。下水、湖沼など自然界に広く分布しており、太陽光と硫化水素を使ってCO2から有機物をつくる。
この硫化水素を使うところから、この細菌に水素を作らせるという研究がすすんでいる。それは燃料電池の燃料として利用するためである。糖を分解して水素をうる嫌気性の細菌があるが、この菌の遺伝子を取り込んで能力の高い細菌をつくり、水素生産の効率化がはかれるのではないだろうか。ただし、現時点では微生物による水素生産に関しては悲観的な意見もある。

大腸菌

 腸内細菌は通性嫌気性のグラム陰性桿菌で、ブドウ糖を発酵的に分解しエネルギーを得る。動物の腸管だけでなく、植物、河川など自然界からも見いだされる。
 この細菌は、有機合成の特徴よりも遺伝子工学の様々な要請に応えるという特質を有しており、バイオテクノロジーの目玉ともいえる、遺伝子組換えの中心細菌の地位を獲得した。これには研究室用に特化されたK12株が利用されている。
 その特性とは、いろいろなDNAを読むことにたけており、異なったプログラムも読みとる。培養に際しても栄養的要請が低い上、増殖が早いのである。よって遺伝子組換えには有利である。
 人間の遺伝子を組み込んで、それを読み取らせ、必要な蛋白を作らせている。例をあげれば、プロインシュリン、ヒト成長ホルモン、インターフェロンなどである。また様々な微生物が作る酵素の遺伝子を大腸菌に組み込み、増殖させると、親株の数培から数百倍もの酵素を生産することができる。ベーターラクタマーゼ、DNAリガーゼ他である。この方法で酵素の大量生産が可能である。しかし菌体内から分離、精製する上で難しい操作が必要である。ここがこの菌の難点である。そこで、枯草菌が分泌物を体外に蓄積する特性があるので、アミラーゼ生産などには宿主として利用されている。

 以上ひどく簡略な論述になったが、今後もさらに急速な勢いで遺伝子操作技術は様々な分野へと発展し、21世紀の人類に、多くの恩恵をもたらすにちがいない。  了


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