2000.4.12号 08:30配信


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生物学
課題 免疫について


課題1

  1度患った疫病に対して抵抗性を持ち、免れるようになると言うのが、免疫の語義である。
免疫には先天性免疫と獲得免疫とがある。先天性免疫は、食作用のような、対象となる異物の差異を区別しないもので、原始的な動物にも備わっている。獲得免疫は、対象、つまり抗原のそれぞれに特異的な免疫応答で、抗原刺激に接触して後天的に獲得される適応性免疫であり、進化の上で遅れて出現した。

免疫機構の進化
 動物体は自己体の構築について非常に保守的であり、自己の細胞だけで体をつくろうとする。最下等多細胞生物の海綿動物や腔腸動物はすべての細胞が互いに自己同一性を認識し合うことによって、それを可能にしている。ところが動物は進化に伴って細胞間での分業化がすすみ非自己を探知して排除する専業細胞であるリンパ球を分化させたと思われる。 進化の上で最初に出現するのは食細胞である。海綿動物では内胚葉性細胞と間充織とが食作用を持つが、間充織は移動性で防御機能を持っている。ここから進化した様態が、環形動物、棘皮動物に見られる、特異性認識と記憶を備えた非自己排除機構であり、これが脊椎動物のそれとは外観は異なっているとしても、リンパ球の最初のものである、との学説もある。
 以上の如く免疫機構に携わっている細胞はリンパ球であるが、その免疫系は魚に始まる脊椎動物で著しく発達している。特にBリンパ球は脊椎動物に固有のものである。それ以前の生体防御機構が進化しつつ集約されて発現したものといえよう。
 鍵と鍵穴の関係で非自己に対して作用する抗体蛋白を免疫グロブリンという。それはBリンパ球が分裂分化してできたものである。Igと略記されるがigm,iga,igg,igd,igeの5つのクラスがそれぞれ特有の働きを担っている。ウナギにはigmのみが見いだされるのでこれが進化の最初のものである。その後両生類、鳥類、ほ乳類そして人と進化するうちにiggその他のクラスが出現して現在の人間における幾重もの生体防御機構となった。

課題2

 免疫機構の有利
 ハシカと呼ばれる症状がある。これは麻疹ウイルスに感染して起こるものであるが、初めて感染した子供では、ウイルス血症の段階で有効に働く抗体はできていないので、皮膚や肺の細胞へウイルスは到達する。その後ウイルスは周辺の細胞へと広がる。このような状態ではウイルス粒子は血中にでることはなく細胞から細胞へと直接移っている。抗体は細胞内へ入らないので抗体は働かない。したがって重い症状を呈するものである。
 ところが1度感染し、治った子供は、原則として再び麻疹ウイルスに感染しない。1度目の感染によって免疫記憶が残ったため再度の侵入に対してより速やかに抗体が産生される。ウイルス血症となるまでに抗体が十分に作られるからこの段階でストップとなる。症状はあらわれることなくウイルスは排除される。多くのウイルスのタイプに関して再感染に対する獲得抵抗性は、抗体のこのような働きに依存している。

次に予防ワクチンに関して。
 小児麻痺の原因となるポリオウイルスは腸管から侵入するので、予防接種は生ワクチンの経口投与という方法を採る。腸管粘膜を通して弱毒化ウイルス、つまりワクチンを腸管周囲に侵入させその刺激によって腸管周囲で分泌型抗体IgAを作らせる必要から生まれたことである。

 免疫機構の不利
 免疫機構の不利に働く場合も様々なタイプがある。1)感染に伴う過敏症。2)自己免疫病。3)薬物、化学物質、動植物成分に対する過敏症などである。  
結核菌による肺感染のとき、リンホカイン型感作リンパ球は微生物の周りにマクロファージーを繰り返し集合させ、それとTリンパ球の固まりを作らせ、敵を封じ込める場を作る。ところが過剰に行われると血流を妨げ中心が破壊される。肺に空洞が形成され喀血の原因となる。タイプ1)の例である。
慢性関節リウマチは全身病の性格を持つと同時に四肢の関節を侵す局所的な病気である。これは自分の免疫グロブリンに対する抗体分子が作られ、これによって発症すると言われている。
 ペニシリンショックで知られる、抗体IgEの作用で激しい過敏症のあらわれるものがある。皮膚の発疹ぐらいで済むものもならばそれを止めれば済むが、命に関わるものには細心の注意が必要である。
 私は毎春、白樺花粉に対する過敏症に悩まされている。これも抗体IgE作用である。ところでまだ科学的に証明されていないが、花粉が飛び始める前に、白樺樹液を大量に飲むとほとんど症状がでない。症状がでるのも免疫機構のせいだが、樹液中の何かの成分によってそれが抑制されるのも、免疫機構の別な面の作用であろう。この樹液と花粉症の関係を、どこかしかるべき機関で調べて貰いたいと思っている。
 了



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