2001.1.7号 08:00配信


経済学

課題 財政政策


  序論
 財政政策、金融政策の効果に関して論述するにつき、以下のような構成を採る。全体を財政政策と金融政策の二つに分け、それぞれの定義と目的、手段に関して論を進めながら、それぞれの効果に関して論ずる。そして、二つの政策はそれぞれ補完しあうものなので、最後に両者の関係に関しても簡単に触れることにする。

 本論
 1 財政政策
 財政とは国家や地方公共団体など政府部門の、歳入、歳出に伴う経済活動を指す。財政政策の主要な目標としては以下の四点が挙げられる。
(1) 所得の再配分
 貧富の差といった、放っておけば社会不安をもたらすような所得配分の問題については、市場機構によっては解決されず、政府部門の役割である。また地域間の格差の是正も目的とされる。そのため高度の累進課税、相続税の重課、社会保障施設の拡充等が行われている。
 (2) 景気調整
 自由主義国家観の退潮と共に、財政は経済に対して中立であるべしとの思想は姿を消し、これに代わって財政をもって景気政策の手段とする見方が全面に出てきた。特に1930年代の大不況に端をはっしたものであり、いわゆる補正的財政政策の名で呼ばれている。 
 (3)経済成長促進
 景気政策としての財政政策が短期的な視点に立つものであるのにたいし、これは長期的視点に立ったものである。いわゆるケインズ理論の動学化、経済成長論の発展と共に財政政策に課せられるようになった新たな任務である。
(4)産業基盤、生活環境施設拡充
 これは上述の諸政策目標の総合とも言うべきものである。国家活動の本来の目的である公共欲望の充足がその範囲を拡げたもので、道路、港湾、工業用水などの産業発展のきばんとなるもの上下水道、住宅、公園などの生活環境整備のためのものが含まれる。これらは併せて一般に、社会資本とよばれる。
 しかし社会資本整備は単に公共欲望の充足という行政目的に止まらずそれ以上の意味を含む特性がある。産業基盤の建設は産業資本を強化し、長期的な経済成長に貢献する。生活環境整備は社会政策上の目標であり、ともに財政支出の操作によって景気の調整をはかることも可能であるので、これは現代では重要な景気政策の一環にもなっている。

  財政政策の手段
 以上の目的を達成するための財政政策の手段は歳入と歳出である。歳入は所得税、法人税などの直接税、また消費税、関税などの間接税、社会保険料、国債発行に基ずく借入等からなる。支出は最終消費支出、道路、港湾の建設などの総固定資本形成、年金、健康保険等の移転支出、補助金、国債に対する利子支払いなどから成る。

  財政政策の効果
 フィスカルポリシー
 不況期に政府支出を増やして需要を作り出し、景気過熱期に政府支出を減らしたり増税をすることによって需要を抑制し、インフレ無き完全雇用を達成しようとする財政政策のことをいう。
 例えば、ある国の働く意志と能力のある労働者全てを雇って生産したら100兆円の生産物が生産されるとする。しかし民間市場では不景気なため80兆円しか需要がないとする。その場合生産物の供給は需要を上回り売れ残る。すると企業は生産を縮小し、労働者の解雇を計ろうとする。ここで失業者を出さないでおこうとすれば政府が20兆円の需要を作ってやればよい。政府が民間部門から財貨、サービスを購入した時に5倍の需要が作り出されるとすると政府は民間から4兆円だけ財貨サービスを購入することによってその目的を達成することができる。
 ここで言う、政府の購入額の5倍の需要という場合の数字5のことを、政府支出の乗数効果という。
 逆に生産物の供給が需要に追いつかず、インフレギャップを生じている場合は需要インフレが発生する。もしこのようなインフレーションを抑えるべきなら、政府は財貨、サービスの購入を減らしたり、増税をする事によって需要を抑制するような政策をとらなければならない。この増税の場合は乗数効果を削減するという効果がある。
 従って減税は国民所得を増加せしめ、増税は減少せしめるという効果がある。

2 金融政策
金融とは資金が融通されることである。これには企業金融、消費者金融、財政に対する金融、国際金融などがある。そして金融政策とは、財政政策と並ぶ経済政策の一つの手段である。その目標とするところは以下の三点である。
 (1)物価の安定
 物価水準の変動は所得分配に与える効果などを通じて人々の生活や企業活動に大きな影響を与える。特に消費者物価の安定は所得配分の公正さの基礎となる。
 (2)完全雇用の実現
 これは財政政策と重なるが金融政策の目的としては比較的新しい。この完全雇用の実現はしばしば物価の安定とは二律背反の結果をもたらす。
 (3)国際収支の均衡
 一国の大幅な黒字は他国にとって失業の増加となり貿易摩擦が生ずる可能性が高く、長期的に見て国際収支の均衡が望ましい。

  金融政策の手段
 「支払い準備率操作」と「公開市場操作(オープンマーケットオペレーション)」の他「金利政策(公定歩合政策)」がある。

「金利政策」
 中央銀行が市中金融機関への貸し出し金利を上げたり下げたりすることによって国民経済の資金の需要と供給に影響を与え、それでもって景気の波を出来るだけ小さくする効果をねらった政策である。

 支払い準備率政策
 銀行は預金量のうち、一定比率を支払いのための準備金として保有しなければならない。 この支払い準備金の預金に対する比率のことを支払い準備率という。この支払い準備率を中央銀行が上げたり下げたりの操作をすると、銀行は準備金の量を増減させることによって信用の利用可能性を変化させられる。従って銀行の信用創造、資金供給を増大、減少させるという効果を生む。

 公開市場操作
 中央銀行が一般の公開市場において有価証券や手形を売買することによって、市中銀行の手元資金量増減させ、信用供与を増減させて金融市場の資金量を調節するものである。 例えば市場に資金が余っている場合、金利が下落し経済発展を阻害する。従ってこのような状況の時は中央銀行が手持ちの証券を売り操作といって放出し、市場の資金を吸収するのである。逆に市場に正当な資金需要がありながら市場にも金融機関にも資金が不足して金融が逼迫し、金利が高騰するような場合には、中央銀行は買い操作によって市場や金融機関保有の有価証券を買い上げて資金を供給し資金不足を緩和させるのである。
 一般にはこの政策は金利政策の補足手段として用いられる。例えばインフレーション傾向が存在するような場合、金利政策の効果はあまり期待できないが、公開市場政策は直接に資金を吸い上げることによって市場の資金量を収縮することが出来る。

 財政政策と金融政策の長所と短所
 財政政策の長所は、政府支出を通じ、あるいは租税を介して、その有効需要に及ぼす効果が直接的で端的であり、きわめて有効度が高い。
 しかし欠点も幾つかある。一つは実行面におけるタイムラグの問題である。つまり財政政策はその時々の景気情勢に応じて妥当な手段を予算を通じて実行にうつすものであるのだが予算が編成されてより支出され実際に効果をもつまでにはかなりのタイムラグがあるので、甚だしく効果を失することがある。
 また政策の決定が政治面でなされるために、政治的な抵抗ないし圧力をうけて好ましい効果を上げ得なくなるおそれがある。

金融政策の長所は財政政策に比して、機動性が高いと言うことである。もう一つは、政治的中立性である。中央銀行は一応政治的に独立の立場にあるから客観てきな立場で景気に対処できると見られている。
 しかし欠点としては、その作用が財政とちがい間接的なところにある。従って金利操作、資金量操作を介して有効需要に影響を与えようとしても、必ずしも予期した効果を上げうるとは限らない。また金利を引き下げることによって投資がどの程度まで刺激されるのか疑問視されるところである。先行き見通しの悲観的な気分のなかで見込み利潤率が極度にていかしているために金利の引き下げもその効果を発揮することが難しいこともある。

  財政政策と金融政策との関連
  財政政策と金融政策とは別個のものではなく、両者の間には相互に依存の面がある。 例えば政府支出の増加によって所得の造出をはかるとする。所得が増加すれば、そのための貨幣需要が増大し利子率は騰貴する可能性を持っている。それゆえ、そのようなときには貨幣供給量の増加によって金利の上昇を阻止しなければ財政政策の目的を達することが難しい。
 また政府支出が公債発行でまかなわれるとき、公債公募のために金融市場の資金が吸い上げられ、ために設備投資などのための資金が窮屈になり金利の上昇を招くことがありうる。その際公債の消化を容易にするにはどうしても低金利政策が採用されねば成らなくなる。

まとめ
 上述のように財政政策と金融政策とにはそれぞれ長所と短所とがあり、しかも密接な関連性をもっている。それ故経済安定のための政策として当然両者は補完的な立場にあるものと考えられる。よって目的にあわせて政策を組み合わせ行うことが必要である。     完


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