2000.7.12号 06:00配信





こんにちは皆さん、よく耳にされます「気」と「漢方薬」についてお伝えしましょう

『日本東洋医学について』その3

★『気』ってなに:気の正体とはなに!

東洋医学において、身体と疾病を、どの角度より見るかによって、いくつかの分析法があります。そしてその分析に基づいた患者さんの状態を、『証』と言います。

この証に基づいて、治療法(漢方薬の処方)を決定するのが東洋医学の特徴です。証を決定する分析の一つに、身体にとって基本精微物質としての気・血・水(中医では津液)があり、この状態の異常が身体の異常として出ると考えます。他には八綱(陰陽・虚実・寒熱・表裏)より診断したり、各身体臓器の五臓六腑(心・肺・脾・肝・腎の五臓と胃・小腸・大腸・胆・膀胱・三焦の六腑)の状態の異常、六経(太陽・小陽・陽明・小陰・大陰・厥陰の6病期)の分類で、これらを組み合わせて『証』を決定し
ます。

ですから同じ様な状態でも、患者さんによって漢方薬が、異なることがあるのです。これらを細かく説明いたしますと、少し専門的になり時間もかなり必要になりますので、今回は略させていただきます。

ただ『気』に関しましては現在日常的に用いられている気持ち=心ではなく、生体のエネルギーのことで、漢字的にも気と汽は元々の意味は同じで水力(蒸気の)エネルギーを使うもの汽船・汽車の汽なのです。即ち人間が、元々持っていたエネルギーが満ちている状態が、元気、エネルギーを失ってバランスを崩している状態を、病気と称し、その間の少しエネルギーを失いかけている状態・バランスを崩しかけている状態を、病気には未だ至ってはいないとして、未病と呼んでいます。ですから、前回申した「気の持ちよう」とか「気のせい」と言うのは、本来のエネルギーを、失いかけているのだから、良いエネルギー(益気)を取り入れるようにして下さいと言う意味で、だめなんだと諦めて、更にエネルギーを失うのではなくて、頑張ろうと思うだけでも気力(エネルギー)が増すことを指しています。

最近は、いろいろとストレスが多い社会となって、肉体的のみならず精神的なエネルギーの消耗によって、病院にかかる程ではないと思っている未病状態の人は、非常に増えています。ストレスが少ない社会を築くことが大切なのですが、それが難しい現状では、もう少し精神的な未病で、気軽に受診できる様に、我々医療機関も努めなければならないと思います。また陰陽・虚実においては、中庸が一番いい状態、即ちマイナス過ぎてもプラス過ぎてもバランスが崩れていると捕らえるのも特徴の一つです。元気すぎるというように、◎◎すぎるのも決していい状態ではないということです。

『日本東洋医学について』その4

★漢方薬について

次に漢方薬について、いくつかの誤解を受けておりますので、少し説明させていただきます。まず第一に、「長期にわたって飲まないと効かない」−確かに、多くの漢方薬は、長期に服用する慢性疾患に効果がありますが、速効性・短期間服用の薬もあります。

例えばよくTVの時代劇で、「シャク」と称する急性の胃痙攣に、印篭から薬を取り出して、飲むとすぐに治まるのが芍薬甘草湯と言う薬です。

また風邪と言う急性の病気に用いる、葛根湯をはじめとする漢方薬もあります。但し、葛根湯は風邪薬ではありません。実証の、人の胸より上の熱を抑える作用がある薬で、風邪、扁桃腺炎や中耳炎だけでなく、頭痛・肩こりや首・肩・上肢の神経痛にも用いられます。

次に「漢方薬には副作用がない」これは大うそで、副作用はある意味では西洋薬より多いと思います。ただし、命に関わる重篤なものは、きわめて少ないのは事実です。また、一番最初に申し上げましたが、漢方薬と混同されている多くの健康食品は、効果が認定されていないだけでなく副作用についても十分に検討されていないものも、少なくありません。

漢方薬は、先ほど申し上げました『証』に基づいて処方されなければなりません、証が違いますと誤用症状(副作用)が出ることがありますので、医師または医師の処方に基づいて、薬局より入手していただくのが本来の姿でよろしいのですが、一部の漢方薬は薬局・薬店で販売しておりますし、漢方薬配合の薬も販売されておりますので、ご自分にあったお薬をお選び下さい。

尚、蛇足ながら、スポーツ医学の担当する医師の一人として申し上げますが、生薬の一部にドーピングに抵触するものもございますので競技スポーツをなさる方は、必ず医師にご相談下さい。過去のオリンピックにおいて日本人が大会および競技は違いますが、大会中のドーピング反応に陽性が出て、本人ならびにトレーナーの無知により不注意と裁定され、大会の出場を禁止されただけ(永久追放や何年間の活動停止にならなくて)ですんだものの、いくつかは生薬配合の薬局で販売されている風邪薬が犯人でした。

このことは、不思議にマスコミには取り上げられなかったと、記憶しています。現在は、生薬に含まれている成分がドーピングに抵触するかどうかを知らずに服用しても、ドーピングを故意に行ったと判断されます。十分に注意して下さい。

以上数回に渡り簡単(本人は本当にそう思っているのですが)ではありましたが、私が関わっている東洋医学について、少しでもご理解が得られましたら幸いです。

次回からは別項を起こしたいと考えています。
ではまた。
sirokuma@webnews.gr.jp


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