2000.7.27号 06:00配信


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流氷の世界(15)
海からの素晴らしい贈りもの

閑話の間話 ズロース・一丁

これは、ロシア漁船の寄港する港町向けの雑文です。

ズロース・一丁



紋別にも「日本人専用」なる看板を掲げた飲み屋さんがあります。英語、フランス語、中国語・・・と50数カ国語で書いてあるなら、字が小さ過ぎて誰にも読めず問題にはならない。それにもめげず虫眼鏡と辞書を持ち込み、何日間も掛けて読み終えた人は、ウン、これは「鎖国主義者寄合所」にちがいないと呟きながら、疲れ切って家に帰って寝るだけでこれも問題になりません。

ところが現実にはロシア語だけ。これは明らかにロシア人拒否宣言です。どこかの国で「日本人お断り」と書かれた看板を見つけたら僕はどう思うでしょう。僕はロシアが好きです。あの素朴なロシアのこころが。たくさんの友人もいます。

たとえ文化のちがいであろうと、一部の人の行為であろうと、目に余るものもあります。そのためにお客が去ったら、店はたまったものじゃありません。あの看板、好きでやってるのじゃない!というのも当然、正当防衛ともいえます。我が愛するロシアの友ら、残念ながら、ビールを持ち込むなど、ステアでも、しばしばおこしてくれます。職員の方々のご苦労も並大抵ではありません。商店街にとっても、ロシア人は大切なお客様、市当局もビラを配るなど努力しています。ところで、ロシア領事館は、この事態を知らないのでしょうか。それとも、自国人への教育・指導はやってはならないという国際条約でもあるのでしょうか。ここでまた僕は苛立つのです。

僕のロシア語は、せいぜい挨拶と乾杯!だけ。たまたま、髭面のロシアの大男と温水プール・ステアで一緒になりました。片言のロシア語で「ズラースチェ」というと、母国語で声を掛けられた驚きと嬉しさを顔全面に表して「ズラースチェ」と応えました。この言葉、より正確には「ズドラースーブイチェ」、意味は、おはよう、こんにちは、こんばんは、オッスとどれにも対応、挨拶はこれで充分です。早口では「ズロース一丁」と聞こえます。

ある日、プールの2人の美人フロントに、ロシア人には一言でもロシア語で挨拶した方がいいよねと言うと、「ロシア語話せませーん」とのそっけない返事。「ズロース一丁」と言えばいい!と言えども、疑わしい目つき。

偶然、そこへ3人のロシア人登場。チャンス到来。僕は、わざと大声、かつ、明確な日本語調で「ズ・ロ・ウ・ス・一丁」と声を掛けた。3人のロシアさんも、即座に笑顔で返礼。ついに、疑い深い彼女らも、僕の素晴らしいロシア語に敬意を表し、感嘆の声を禁じ得なかったのである・・・?

お隣のサハリンで油田開発が始まりました。もちろん海の油汚染対策は大切ですが、近い将来、ここは大産油国となり日本は大輸入国になることは明らかです。ロシアとの交流は否応なく進みます。紋別の発展につながる可能性も大です。ちょっと無愛想に見えるロシア人たちですが、避けるだけでなく、こちらから彼らのこころに触れる努力は大きな力を発揮すると信じています。ロシアの友も、そこから日本の文化や生活様式を理解してくれると思います。

裸の付き合いができる唯一の場、健康プール・ステアは日露外交の掛け橋になれるでしょう。今日から、たった一言の「ズロース・一丁」を実行しよう!ついでに、おやすみは「スパコイノイ・ノーチェ(静かな夜をの意)」、さようならは 「ダスビダーニャ」です。では、皆さん ダスビダーニャ。

おっと大切なことを言い忘れました。「ズロース・一丁」を間違えて「パンティー・一丁」と呼びかけないで。これは通じないと思います。

(初出:紋別健康プールステア・ステアだより2000年3月号)



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